2008年01月19日
【ミステリ】女王国の城 有栖川有栖・著
2008 01 19 | 感想>書籍
探偵役が江神部長である学生編の長編四作目。
クローズドサークルでフーダニット物。宗教団体の本拠地が舞台。「村への唯一の橋が崩れた」「雪山の山荘に閉じ込められた」「嵐で孤島に取り残された」などとはまた違う、一風変わったクローズドサークルなのが面白い。
ミステリとして面白いし、シリーズ物としてもEMCメンバーの活躍が多く楽しめる作品。
一応、ネタバレ無しのつもりでの感想。
※ それでも「予備知識入れずに読みたい」と思ってる方には不向きな感想だとは思います。
変化球では無い、正統派の直球勝負なミステリ。
謎解き・トリックに派手さは無いけれど、骨太でしっかりとしていて好印象。舞台背景や時代背景や謎解きのヒントとなり得る情報はもちろん、UFO・SFについての話も全てが丁寧に語られます。むしろ丁寧すぎるんじゃ?というくらい丁寧かもしれない(笑)。
そんな丁寧さが災いしてか、事件の事の字も出ないうちはスローペースで読んでました。
でも舞台となる村での過去の出来事、地元民からの印象と反対に怪しい態度を取る宗教団体……などなど。じわじわとおかしな部分が見え始めると話に引き込まれ出し、読者への挑戦以降はそれまで以上にのめり込んで一気に読了。
犯人を示す条件に思わずうなり、クローズドサークルの理由にも大いに納得。説得力のある結末に満足。
読む前は「江神新作は嬉しいけど、分厚い……」と積んでしまっていたのだけど後悔しちょります。「ハードカバーでこんな厚いと持ち歩いて読めないよね」と思ってたのに、解決編が近付く頃には普通に鞄に入れて持ち歩いてたし。
それにしても事件解決への糸口が、文中にさりげなく紛れ込ませてあるのが上手い。普段は読み終わっても「読者への挑戦あってもわかんないよー」と思うタイプなのだけど。解決編の犯人特定部分を考えると「洞察力のある人ならわかるのかも」と思わされる内容。自信のある人には挑戦してほしい。
ここを疑えという推理の中心部分は明らかなのに、真相に近付けなかったのが悔しいなぁ。
欠点はハードカバーで二段組な上にページ数が500ページもあること、か。長所であり短所。面白いからいいけれど、読もうとする前に「先が長いな!」と呆然としてしまう。
本文を膨らませている要素の一つがUFOやSF関連の薀蓄話なので、そこも興味ない人にはつらいかなぁ。でも作者の紹介の仕方が上手いので、「これ読んでみたいかも」と思わされる事もしばしば。